映画『最強のふたり』感想
少し前に上映されていたのですが、最近観た映画の中でイチオシしたい作品が『最強のふたり』です。原題は"Intouchbles"みたいですが、よくぞこの邦題にしたと思えるほど、ぴったりな内容のフランス映画でした。
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あらすじ
脊髄損傷の富豪フィリップと、失業保険の書類を集めるためにフィリップの介護人の面接に来た貧困層のドリスの友情をコメディタッチで描いた実話の友情作品です。
ドリスは障害を持ったフィリップに対しても普通の人と同じように、いやむしろ友達のように接することができる素直な心の持ち主です。フィリップはこうしたドリスの素直さに惹かれて周囲に反対されつつもドリスを試用期間を決めて雇ってみることになり物語はスタートします。
音楽が最高
冒頭から美しいピアノ曲が流れているので物静かな始まりです。ピアノの音色はルドヴィコ・エイナウディによる演奏で、ただただ美しく最初はセリフもしばらくありません。
しばらくして警察に捕まって病院まで護送されるシーンは打って変わって、ドリスがEarth, Wind & Fireの「September」を流し軽快な音楽でフランスを走るシーンがオープニングです。
全体的に明るい曲が使われるシーンは少なめではありますが、ドリスが曲をかけるといつもEarth,Wind & Fireが流れます。内容や人物の背景は全体的に暗いのですが、ドリスという人物によって物語や観ている人の心を明るく照らしている印象を音楽から受けました。
そして、エンディング。オープニングと同じく、ルドヴィコ・エイナウディによるピアノ曲です。オープニングのときは作品のイメージとは少し違うな…と感じていましたが、エンディングまでまで観た後には、この音色が大変美しく感動的なものに感じました。
本当にいい曲ばかりだったなと思ったときに、サントラが発売されていると知って購入を真剣に検討してしまいました。
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フィリップこそ注目されるべき
ついドリスにばかり注目しがちなのですが、僕はフィリップのユーモアを受け止める寛大さや素直なドリスに対して素直になれる気持ちをとても尊重してしまいました。
フィリップはドリスの素直過ぎる言い分や過激なジョークや行動に対して怒ったりもせず、淡々と反応しています。しかし、フィリップが決して怒らないわけではないのです(後半は他の介護人に対して怒っているシーンもありましたので)。ドリスほど率直にものを言うタイプの人間と一緒にいることによって、フィリップの気持ちもおおらかになっていったのではないかと思いました。
移民の多いフランスでは差別は当たり前の文化となってしまっているようなのですが、フィリップは黒人で且つ貧しいドリスに対しての差別的発言は一切ありません。それどころか、娘がドリスに対して行った差別的発言や行為に対してしっかりと注意をするほどの公正な心を持っています。
社会には特別扱いの度が過ぎてしまっていることが往々にして存在するが、フィリップは障害者として特別扱いされることを嫌っています。ドリスのように、「できないことには手を貸せばいい」ぐらいの気持ちで接してくれる方が居心地がいいということが伝わってきます。もちろん障害者の方により適切な接し方というのは異なることは分かってはいますが、健常者と障害者を描く上で重要なことを教わりました。
先導しよう その方が安全だ
冒頭のシーンで何度もドリスが発言する警察官のマネです。
なぜか耳に残るセリフですが、この辺りから「この映画、楽しそうだな!」と思えてくると思います。
疲れた時や優しい気持ちになりたい時、大切な人と一緒にいるとき、どんなときにでも、何度も観たいと思える最高の名作だと思います。