あなたにとってのFintechは何ですか|『誰がFintechを制するのか』
Fintechってなに?
そう聞かれて、一言では説明できない自分に恥ずかしさを感じるとともに、問いの難しさを感じました。
Fintechに関わる7人のスペシャリストへインタビューした話をまとめた本があり、それぞれの立場にとってのFintechを説明されていました。
それぞれ立場が違う人へのインタビューとなるので、この本としての総合的な意見というのはぼかしている印象がありました。
ただし、もしFintechに関わる仕事をしているのであれば、必ず誰か同じような立場の人の話が書いてあるのではないでしょうか。
ポイント
- Fintechの意義は不便なことの解消
- 金融への不信感の理由は、投機と間違った期待値計算によるもの
- Fintechは、今後パラダイム・シフトを起こす
Fintechの意義は不便なことの解消
実にシンプルな答えだと感じました。
これは、Japan Taxiの川鍋さん、メルカリの小泉さんの意見が共通しており、自分でもそうだと思いました。
Japan Taxiの川鍋さんにとって、タクシーのUI・UXを最高にするという点を突き止めると、それ専用のハードウェアやソフトウェアが必要となり、それを創り、他社へ販売もしています。
また、メルカリの小泉さんにとって、Fintechはテクノロジーをベースとして考えるものではなく、お客様目線で何か不便なことを解消しようとした結果生まれるものであると定義していました。
何かITの原点に立ち返ったような感じがします。
IT屋はつい、新しい技術を使って何かをするという発想に陥りがちではありますが、本当はお客様が不便なことの解決をするためのITであり、それができるのが最新の技術だという発想の流れが健全かつ適切だと思います。Fintechも同じですね。
金融への不信感の理由は、投機と間違った期待値計算によるもの
これは、大阪大学大学院の教授である安田さんが答えていたものですが、Fintechを含む金融への不信感があるのは、投機対象として扱われることが多いからです。
これは、特に株やFXなどで顕著だと思いますが、ハイリスク・ハイリターンな商品を買って価格の上下によって売買を繰り返す行為に当てはまります。また、様々な金融商品が存在して、何を買ってもハイリスク・ハイリターンになる傾向が強いということもあります。
そういったギャンブル的な使われ方をする金融の取引によって、不信感を募らせる人が多くいることも確かだと思います。
間違った期待値計算については、国家公務員の藤岡雅美さんが「日本人はリスクをダウンサイドでしかみれない」と書いています。大きな変革がすぐに起きなくても少しは待つ必要もあります。
大きな変革も小さな種から生まれるという言葉の通り、これをやれば社会は劇的に変わるんだという仕事はなくて、努力の積み上げでしかないのです。
Fintechは、今後パラダイム・シフトを起こす
アリババ経済圏内で使われる「芝麻信用(ゴマ信用、ジーマ信用、セサミクレジット)」と呼ばれる言葉をご存知でしょうか。
人の信用度合いを点数化したもので、その人の行いや、資産、学歴、年齢、過去の取引記録、人脈、クレジット情報などの国が持つオープンデータから作られます。この点数の高低によって、ホテルなどで受けることができるサービスが異なったり、住宅の敷金が安くなったりといった効果があるそうです。
このように、信用価値はオープン化されつつあります。
フィンテックには、信用価値のオープン化によって、お金のやり取りすらも不要になる世界の可能性すら持っています。本書では、そのことをイノベーションであり、パラダイムシフトであると述べています。
お金のやり取りだけではなく、誰と仲が良いなど交友関係のようなデータが加わって、複雑に絡み合った新しい価値を、今度は日本が創っていくことを著者は期待していました。
ポイント
- Fintechの意義は不便なことの解消
- 金融への不信感の理由は、投機と間違った期待値計算によるもの
- Fintechは、今後パラダイム・シフトを起こす
上記は僕が良いなと思ったポイントをまとめて記載してしまいましたが、本書は著者や最後の対話形式も含めると、総勢10名以上の人々が「フィンテックとは何か」について語っている本であり、それぞれのアツい想いが綴られています。
フィンテックってなんだろうと疑問を抱えている方や、フィンテックに今まさに関わっている方にとっても間違いなく参考になる書籍だと思いますので、是非手にとって見てください。